映画の中の夏火鉢

(前回のつづき)


「夏炉冬扇」の言葉どおり、夏に火鉢は役立たず、夏には火鉢は片付けてしまうもの、と当然のように思っていましたが。

実際昔の人は夏にいちいち火鉢を片付けていたのか、どうか、と考えてみたところ、ふと、古い映画で夏に火鉢が出てくるのを見たような気がしたので、怪しい記憶力をたよりに、ちょっと探してみました。

あった!


ということで、以下、映画の中の夏火鉢です。



◆隅っこに置いてる編◆

夏の火鉢1
『稲妻』1952年 成瀬巳喜男監督 出演: 高峰秀子 三浦光子 村田知栄子ら

タイトルからもわかるように、夏の物語。
火鉢は部屋の隅に置いてありますが、フタなどせず、鉄瓶などが乗ったままなので恐らくはお湯を沸かしたりするのに、使っているのではないかと、思います。(余計なお世話ですけども、箪笥の引出しが開かなそうなのは気のせいか、いや気のせいじゃない…!)




夏の火鉢4
『喜劇 駅前団地』1961年 久松静児監督 出演:森繁久彌 伴淳三郎 フランキー堺ら

季節がはっきりしませんが、淡島千景が半そでなので多分暖かい季節でしょう。
こちらも壁際に置いてある火鉢。そして薬缶。これも端っこにありながら、たぶんお湯を沸かしたりするのに使われているのではないでしょうか。使うには使うけど、部屋の真ん中に置くと暑くるしいから端っこへ?





◆冬と同じように使っている編◆

夏の火鉢2
『流れる』1956年 成瀬巳喜男監督 出演: 田中絹代 山田五十鈴 高峰秀子ら

芸者置屋「つたの家」の居間。完全に夏ですが、山田五十鈴のお蔦さんが火鉢の前に座り、煙草盆のように使っています。このくらいの大きさの火鉢だと、動かすのも面倒だから年中この位置に置いてあるのでしょうか。当然のように使用中、と見えます。



夏の火鉢3
『喜劇 駅前旅館』1958年 豊田四郎監督 出演:森繁久彌 伴淳三郎 フランキー堺ら

旅館の、お帳場。
これも季節はよく分かりませんが、柊元旅館の主・森川信が半そでなので、暖かい季節でしょう。左下に、火鉢に鉄瓶が乗っているのが見えます。あたりこそしないものの、わりとお部屋のド真ん中付近に配置し、片付ける気配は無い模様。火鉢のデザインが格子状で素敵です。





◆囲炉裏使ってる編◆

夏の火鉢5
『喜劇 駅前温泉』1962年 久松静児監督 出演:森繁久彌 伴淳三郎 フランキー堺ら

こちらは、会津の温泉街。
これも季節不明ですが、半そでの人がわりと出ています。
土地柄、夏でも涼しいのかどうか、そこのところもちょっと分かりませんが、囲炉裏には炭火が熾っていて、旅館の主・森繁久彌が、煙管に火をつけたり、お湯をぶちまけて灰神楽をあげたりしています。




◆片付けてる…!編◆

夏の火鉢6
『喜劇 駅前団地』1961年 久松静児監督 出演:森繁久彌 伴淳三郎 フランキー堺ら

見つけた、片付けてある…!
こちらは逆に、火鉢が片付けられて、廊下の隅に重ねて置かれているところ。右奥の、朱色のが火鉢だと思います。




以上、駅前シリーズが過半数になってしまいまして、映画の中の、というか、もう、アンタどんだけ駅前の火鉢に目を光らせてんのー!という結果になりましたが。


結論。

つまり、夏に火鉢を使っていても別におかしくはない。ということだと思います。

おかしくはないけど暑い、ということだと思います。




さてうちはどうしようかなあ~!




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2012.06.09 | | 壱階―昭和・映画イラスト

プース・カフェ


プース・カフェ

昨日は「大正時代」の繋がりで初めてお会いした素敵な方々に、帝国ホテルのバーに連れて行って頂きました。
滅多に行かない(×行かない→○行けない)ところなので、浮き足立ってしまう。多分3センチくらいは浮いてた。

隣の席の御婦人が注文されていた、プース・カフェという五色のカクテルを写真に撮らせてもらいました。お酒の糖度による比重の違いで、重いものから順にそっと注いで作るそうです。七色のものもあるそうです。す、すごい。

趣深い話に惹き込まれ、滅多に行かない(×行かない→○行けない、というか初めて行った!)ところなので、ついつい長居させて頂き、ふわふわした気分で帰りました。

夢だったのかもしれない。


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2012.06.04 | | 壱階―昭和・映画イラスト

街中ロープウェイ


通天閣の針金渡り
明治45年、大阪の初代通天閣のロープウェイ。


浅草松屋の航空艇
昭和6年開業の、浅草の松屋デパート。
その翌年に屋上に完成した「航空艇」(ロープウェイ)。


渋谷のロープウェイ
こちらは戦後、昭和27年。
渋谷の東横百貨店の屋上と、玉電ビル(現在の東急百貨店東横店西館)をつないでいたロープウェイ。



どれも高所恐怖症キラーなメンバーですが、通天閣のロープウェイが、時代が古いことも相まっていちばん恐そうです。
ポップコーンの屋台みたいなものがそのまま空中に行っちゃった感じで。
特に高所恐怖症じゃないわたしも、これに乗れと言われたらかなり腰が引けると思います。壁っぽいものに囲まれてないし。
当時は「針金渡り」と呼ばれていたそうで、その名称がまた肝試されてるっていうか、恐さを上乗せしてますね。
おねがい針金じゃないやつにしてー!
鋼鉄みたいなのにしてー!
とか、きっと思う。
もし当時生きてて、もし乗せられそうになったら。

恐ろしさはともかく、見える景色はどれも面白そうです。
観覧車もそうですが、街を見下ろす、しかも飛行機のような高度ではなく、この、人の顔が分かるくらいの高さから見下ろす、というのがすごく愉しそうです。

通天閣の下がまるで外国のようですが、これは内国勧業博覧会の跡地に建てられた「ルナパーク」という遊園地だそうです。右下の国旗がたくさん立ってるのは、上下に波状に動きながら回転する「サークリングウェーブ」という乗り物。

松屋の航空艇は、ほそ長いビルの屋上の両端を往復してます。
当初の計画では、隅田川を越えて対岸から折り返し運転する予定だったのが、許可が下りず断念したそうです。ぜひ川を渡ってほしかった。ざんねん。

乗り物自体は、松屋の航空艇がダントツでかっこいいなあ!


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2012.06.02 | | 壱階―昭和・映画イラスト

淑女はけっきょく何を忘れてたの?

淑女は何を忘れたか


『淑女は何を忘れたか』
1937年、小津安二郎監督です。
出演は、栗島すみ子、桑野通子、斎藤達雄、佐野周二、飯田蝶子、吉川満子ほか

山の手の裕福な夫婦2人の家に、大阪から、モガで破天荒な姪が遊びにやってくる、というお話です。
タイトルの淑女は、山の手の奥様、栗島すみ子のことなのだと思いますが、初めから終わりまで、戦前のいかにも貞淑な妻というイメージの人物ではなくて、煙草は吸うし、旦那を置いて友人たちと歌舞伎観に行くし、色々わーわーうるさいし、なのです。
それが最後に一挙にいわゆる淑女に変わるかというと特に変わらないし、この家は今後も奥さん主導で時々「増長して」わあわあ怒りながらやっていくのだろうなあと、思います。(もしかしたら「淑女」の意味は元からそのくらい広義なのかもしれませんが)
でもそこがとてもよかったです。
性格は違えど、わりといい夫婦だなあと思います。喧嘩ののち、さいご仲直りできて、夫の斎藤達雄もえらくうれしそうに浮かれているし。
姪の桑野通子と、学生、岡田の佐野周二も、きっとそんな夫婦になるだろうという予感で終わるのです。

いつも弱気な夫、斎藤達雄が、感情的になった栗島すみ子を殴っていさめる、という最後の盛り上がりの場面があります。
殴られて改心して、お互い謝るのだけれど、その後、栗島すみ子が友人たちに「殴られたことを自慢する」という展開は意外でした。友人も「いいわねー」と当たり前のようにうらやんでるのです。何それわけわからんー!

でもこの場面を見ると、淑女は何を忘れてて、何を思い出したのか、この答えは、「自分が夫を好きだということを思い出した」なんじゃないか、と思います。たぶん。そんな気がするという程度ですが。

山の手の奥様の友人とは、飯田蝶子、吉川満子です。
栗島すみ子と3人で井戸端会議のように話しているところが面白くて好きです。飯田蝶子が人の家で出前を取ってもらうのに、「鰻丼はいやぁよ。鰻重がいいわ」とわがまま言ったり、吉川満子と「ばか」「かば」とか言い合っているのも意味不明で好き。
いっぽう、旦那は狭苦しい下宿の一室で、佐野周二とめざし食べていたりするのです。
でもそれもわりと楽しそうなので、よい。

2・26事件の翌年にこんな牧歌的な映画がかかっていたというのも意外でした。歴史の教科書的には、日中戦争の始まった年ですが、ためしに1937年公開の映画のタイトル一覧を見ると、この映画以外でもタイトルからだけで戦争に関係しそうなものは、まだほとんど無いです。

この頃松竹大船のスターだった上原謙が、大船のスターという役で出ています。通り過ぎるだけですが、ものすごく、感心するほどかっこいいです。
上原謙は松竹の先輩女優である栗島すみ子、吉川満子、飯田蝶子から「シルヴァーフォックス」「接待係の謙」「ドアボーイの謙」というあだ名をつけられていたそうです。わりと哀しいあだ名…。接待係て!





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2011.12.08 | | 壱階―昭和・映画イラスト

社長シリーズ



社長シリーズ イラスト


もうひとつのブログと内容がごっちゃになっていましたが、これからは、こちらでは絵や大正・昭和のことを中心にして、あちらはトイデジのみにしようかと思います。
初めからそうすればよかったんだ!
というか初めはそうだったんじゃん。

ということで、「社長シリーズ」もこちらでまたジワジワと増殖させていきたいなと、思いついたりした所存です。
どーぞよろしくお願いいたします。








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2011.09.01 | | 壱階―昭和・映画イラスト

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プロフィール

寺坂安里

Author:寺坂安里
大正・昭和初期の文化と着物を愛する水彩画家・イラストレーター、寺坂安里と申します。
絵とそれ以外の記事が混在していますので、下のカテゴリをご参照いただけたら幸いです。

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