流れる その3


20110901nagareru




【流れる その1】
【流れる その2】

↑もうひとつのブログでとりとめなく書いていました、映画「流れる」の話、つづきです。




山田五十鈴、田中絹代、高峰秀子…

という、いつもひとりでも主役級の女優さんが、いっぺんに出ているという、これだけでも溜息の出るほど豪華な映画ですが。
さらに、この方たちをも黙らせる、活動写真時代の超スーパースター、大御所「栗島すみ子」という人が18年ぶりの銀幕復帰で出ています。

わたしが初めて栗島すみ子の名前を見たのは、林芙美子の放浪記の中でした。
たしか、「栗島すみ子くらいの美人だったら、人生楽勝だったろうなー」みたいなことが書いてあって、いったいどんな美人だろうかと興味を惹かれて、いろいろと探してみました。実際、いろんな写真が残っています。
ただ、わたしの目がどうかしているのか、この方は写真ごとに「まったくの別人に見える」のでした。


たとえばこれと
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これと
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これが
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同一人物だなんて!


見れば見るほど別人に見えるので、ひょっとしたら栗島すみ子という人は何人もいるんじゃないかと思ったりしていました。

でも、この「流れる」で初めて動く映像を見て、点と点が繋がったというか、たしかにどの写真も同一人物だなあと確認できました。よかった。
しかも、そう、たしかにたいへん美しかったです。とくに立ち居振る舞い、仕草とか。
もう、なんつー上品な扇子の扇ぎ方!
山田五十鈴の「つた奴」が、栗島すみ子の「水野のお浜ねえさん」にお金の相談に行った場面での、あのまさに流れるような扇子の扇ぎ方。ぴしっと閉じて、ほんのちょっと間をあけて、

「外へ出ましょうか」

とかなんとか言う時の、何か含んだような絶妙な緊張感。
すんごいかっこいい。あと、なんかちょっと可愛いです。不思議。

姿勢がいいと3割り増しで美人に見える、とはよく言ったもので、きれいな仕草も3割り増しで美しく見えるのだなあ、と感心しました。



また、

「若い時から利口で人に後ろ指さされたことがないえらい生涯を送ってきた女だから、自然ひとが権をもたせるようになっているのだそうである。―――あのおかみさんにでも権をもたせて、みんながお辞儀するようなところをこしらえとかなきゃ、ほかに権式をもたせてさしつかえないような女は今んとこいないのだという」

とは「流れる」原作の一節で、「お浜ねえさん」を指していますが、まさにこれが現実の栗島すみ子に重なるようで、見事なキャスティングというんでしょうか、こういうの。
田中絹代は、栗島すみ子に憧れて映画女優になったそうで、その田中絹代がただの大部屋女優だった頃、同じ松竹で彼女はすでに「大幹部」と呼ばれる雲の上の存在だったようです。
18年ぶりの銀幕復帰とはいえ、この「流れる」撮影中にも、田中絹代以下、他の大女優さんたちも「栗島先生」をたいへん「恐れ敬って」いたそうです。
(このへんのことは川本三郎「君美わしく―戦後日本映画女優讃」の山田五十鈴との対談に詳しく出ています)


さて、この美しく恐れ多いような「お浜ねえさん」、始めのうちは「つた奴」の相談に親身に乗って、あれこれ手を尽くして協力しているのです。

が、最後の最後に急転直下、怖いくらいにあっさりと、彼女たちを見捨ててしまうのでした。


うわあー


(つづく)



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2011.09.01 | | 壱階―昭和・映画イラスト

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プロフィール

寺坂安里

Author:寺坂安里
大正・昭和初期の文化と着物を愛する水彩画家・イラストレーター、寺坂安里と申します。
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